暇な母

田舎に住む、そこそこいい年した母は、老人ホームで
働いている。
うちの田舎に定年はない。
60代で若いと言われる。

別に母はお金に困っているわけではない。
働く理由。
それは、ただただ、暇なのだ。

父は60前でこの世を去り、子は皆、田舎を出たので、
一人で住んでいる。
友人は多くいるが、働いていたり、まだ夫や子供がいたり
と、忙しく、なかなか遊んではもらえない。

昔は働くのが嫌いだった母。
実家は農業を営んでいたので、毎日ぶつくさ言いながら、畑
に働きに出ていた。

うちはほとんど儲からなかった。
なので、父は夏は漁に出て、お金を稼ぎに行っていたが、それ
でも借金をして生活していた。

その夏中、母は比較的ゴロゴロして過ごしていた。
世間の目があるので、一応たまに畑に草を刈りに行くふりはし
ていたが、畑についても、何か食べたり、コーヒーを飲んだり
と、ちょっとしたピクニックのようだった。

そんな母が、今、暇だからという理由で、働いている。

つい先日、遠く離れた街で、イベントがあったのだが、勤務先
のホームがそこに貸切バスで、タダで連れていってくれるという。
片道2時間。そこそこお金もかかるというのに。

ただし、その代償に、ホームの草刈をしなければならないという。
莫大に広い土地で、この暑い中、絶対にやりたくないと、母は
言い、イベントには行かなかった。

そして、今日、母は出勤の日でもないのに、ホームに出かけた。
暇だからという理由で、ボランティアで草刈をしに・・
わけがわからない・・